自己検査編
- 自覚症状が少ない糖尿病は、検査が大切。
- こんな患者さんは血糖自己測定を。
- こんな時、血糖値の動きに気をつけましょう。
- 糖尿病コントロールのもう一つの目安。血中ケトン体検査。
自覚症状が少ない糖尿病は、検査が大切。
日本の糖尿病患者の95%以上を占める2型糖尿病のほとんどは、多尿・多飲などの症状があらわれ、痛みなどはないので気づかない間に病気が進行してしまいます。症状がひどくなった時には、すでに合併症になっていた…。そんなことのないよう、定期的に検査を受け、病状を正しく認識しなければなりません。
自分でできる糖尿病の検査例
病院で受ける検査のほか、自宅で簡単にできるものもあります。よりよい治療のために役立てましょう。
- 体重測定
- 食事療法がうまくいっているかを確認するためにも、体重測定は重要です。毎日決まったタイミングに測るようにしましょう。
- 血糖自己測定(SMBG:self monitoring of blood glucose)
- 糖尿病のもっとも重要な指標、血糖値を測ることで病状を的確に知ることができます。最近では痛みの少ないものや測定しやすいものなど、さまざまなタイプの測定器があります。
- 尿糖検査
- 検査用の試験紙が市販されています。試験紙に尿をつけ、色の変化で、尿中のブドウ糖の有無をチェックします。
- 血中ケトン体測定
- インスリンの欠乏や作用不足を検査する方法として注目されています。ケトン体も測定できる血糖自己測定器もあります。
血糖コントロールを正確に把握できる血糖自己測定。
市販の血糖自己測定器を使えば、家庭で血糖が測れます。日常生活で食事や運動、ストレスなどが血糖に与える影響がわかり、血糖コントロールにとても役立ちます。
血糖自己測定を行うメリットはこんなにあります
- 血糖値を自分で正確に知ることができる
- 1日の血糖の変動をつかめる
- インスリン注射の量が調整できる
- 主治医がよりよい治療方針を立てられる
目標の血糖値とかけ離れている時は?
血糖自己測定で、目標にする血糖値は病状や治療内容によって異なります。あなたの測定結果が、主治医と相談した目標数値から大きく離れている場合は、改めて相談する必要があります。
こんな患者さんは血糖自己測定を。
血糖自己測定はすべての糖尿病患者さんに行ってほしい検査です。特にインスリン治療を行っている人は、必要な薬剤の量を決めたり、低血糖を防止するのに役立ちます。器具を購入するときは、選び方や購入方法など、主治医がアドバイスしてくれます。
こんな人は血糖自己測定を行いましょう
- 1型糖尿病の患者さん
- 2型糖尿病の患者さんでインスリン治療をしている人
- 妊娠中、または妊娠を希望する人
- よく低血糖を起こす人
血糖測定の回数、時間は主治医と相談して決めましょう。
患者さんによって必要な測定回数、測定時間は、血糖値の安定している人・不安定な人・妊娠中の女性などで異なりますので、主治医と相談しましょう。血糖自己測定を始めたら、測定結果は必ず記録し、受診のたびに主治医に見せてください。正確な血糖値を知ることが質の高い治療につながり、合併症を予防します。
痛みが少なく、簡単に測れる。使いやすい血糖自己測定器もあります。
血糖自己測定ってなんだか痛そうだし、大変そう。患者さんのなかには、そう思っている人も多いのではないでしょうか。しかし、現在では血糖自己測定器も改良され、痛みが少なく使いやすい、新しいタイプが登場しています。
こんなに使いやすくなった!新タイプの測定器
わずか2ステップで測定完了!
1.血糖測定電極を挿入する(自動スイッチON)、2.電極に血液を吸収させる、という2ステップの簡単操作です。
文字が大きく見やすい、バックライト付き!
高齢者や視力の低下した方にも読み取りやすい大きな文字。
バックライトにより暗い所でも見やすい機種もあります。
さまざまな便利機能を搭載!
操作の開始/完了を音でお知らせ。また400回以上の測定結果を小さな測定器内に記憶できます。
インスリン療法をおこなうすべての糖尿病患者さんに保険適用がされています。
こんな時、血糖値の動きに気をつけましょう。
血糖値が高すぎる(200mg/dL 以上)とき
原因1 食べ過ぎ・飲み過ぎ
友人と外食してしまった、つきあいで飲んでしまった…。こんな時は血糖値が上昇しやすくなります。翌日からは普段の食事療法を守り、血糖コントロールを保つよう努力しましょう。
原因2 強い精神的ストレス
仕事や人間関係など強いストレスを受けると、ホルモンの働きが乱れ、高血糖を招きやすくなる場合があります。ストレスが解消されると、血糖ももとに戻ります。
原因3 風邪や下痢など肉体的ストレス
風邪や下痢などの症状が強いときも、高血糖になる場合があります。これは肉体的ストレスから体を守ろうと、血糖をあげるホルモンが分泌されるためです。
血糖値が低すぎる(80mg/dL 以下)とき
インスリンや糖尿病の飲み薬を用いている方
原因1 食事の量が少なすぎた場合
食事の量が少ないと、血糖値が低くなりすぎます。あなたに必要なカロリー量を、しっかりと摂取してください。
原因2 食事の時間が遅れた場合
食事の時間が普段より遅れないよう、注意してください。仕事の都合で夕食の時間が遅くなる場合は、食事を何回かに分けて摂るなどの工夫をしましょう。
原因3 動きすぎた場合
歩きすぎたり、体をいつも以上に動かすと低血糖を起こすことがあります。
原因4 インスリン注射や飲み薬の量が原因の場合
インスリン注射の量を間違えたり、飲み薬を飲む時間が正しくないと低血糖を起こす原因となります。主治医に指示されたとおりの用法を守ってください。
こんな人は血糖自己測定に注意が必要です。
- 血糖値が気になって他のことに意欲が湧かない
- 悪い血糖値を医師に見せたくない
- 指示された測定をよく忘れる
糖尿病コントロールのもう一つの目安。血中ケトン体検査。
ケトン体ってなに?
アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸、アセトンという3つの物質をあわせてケトン体と呼びます。これは体内で脂肪が燃えるときに出る燃えかすのようなもの。本来、エネルギー源となるブドウ糖を、十分に利用できない糖尿病の患者さんは、代わりに脂肪を燃焼させています。この時、燃えかすとしてできるのがケトン体です。ケトン体は酸性なので、増加すると血液も酸性になり、体に不具合が生じます。
ケトン体の増加はケトアシドーシスの前兆です。
ケトン体が増え、血液が酸性に傾くと、ケトアシドーシスという酸血症になります。次のような症状が出たら、ケトアシドーシスのおこる危険があります。処置が遅れると生命に関わることもあるので、すぐに診察を受けましょう。
ケトアシドーシスの前触れ例
- おなかが痛い
- 食欲がない
- 頭が痛い
- 口が渇き水分を多くとる
- トイレが近い
- 吐き気がする
体調を崩した時は要注意。ケトン体が増えています。
糖尿病の患者さんが、風邪や下痢など他の病気にかかる(シックデイ)と、ケトン体が増えることがあります。
特に1型糖尿病の患者さんは、2型糖尿病の患者さんよりもケトアシドーシスに陥りやすいので、前触れに気づいたときには、速やかに治療を受けましょう。
血中ケトン体が測れる血糖自己測定器もあります。
血液と尿で測定できるケトン体。最近では血中ケトン体も測れる血糖自己測定器があります。ケトン体の状態を数値で、より正確に知ることができるため、ケトアシドーシスを未然に防ぐ手段として、注目されています。