AGPケースレポートVol.13

症例内容

フラッシュグルコースモニタリング・AGPの長期使用により血糖コントロールが維持できた2型糖尿病の一例

症例提供・監修:
自治医科大学内科学講座 内分泌代謝学部門 講師
岡田 健太先生

患者背景

性別・年齢 女性、71歳
診断 2型糖尿病、糖尿病歴26年(45歳時に糖尿病の診断)
空腹時Cペプチド0.96ng/mL、食後2時間Cペプチド1.50ng/mLであり、インスリン分泌の低下を認めている。
合併症・既往 網膜症なし、神経障害あり、腎症第1期相当で頸動脈プラークを認めている。高脂血症・骨粗鬆症あり。
HbA1c 7.3%
糖尿病治療状況 2017年1月にはメトホルミン1,000mg/日(朝夕食後)、超速効型インスリン2-0-3、持効型溶解インスリン0-0-0-12で血糖コントロールはHbA1c7.3%、グリコアルブミン20.1%であった。経過中、昼食時の治療介入を提案したが、“治療の手間”や“治療の簡潔化”の観点から難色を示していた。
フラッシュグルコースモニタリングを活用する目的 同年2月にフラッシュグルコースモニタリングを導入した結果、下図の通り各食後に高血糖となるグルコース スパイクが確認できた。そこで、食後高血糖是正ならびに長期的に良好な血糖コントロールを保つため、 最適な治療法の選択を検討した。

初回評価データ

日内パターン

2017年2月4日-2017年2月17日(14日)

レポートから得られた知見

  1. 低グルコースのリスクはありますか?
    ほぼ認めないが、夜間から早朝にかけて低グルコースのリスクはある。
  2. グルコース値は目標範囲内にありますか?
    いいえ。各食後高血糖が認められる。
  3. グルコース値の日内変動はありますか?
    ある。各食後高血糖が認められる。
  4. グルコース値の日差変動はありますか?
    ある。特に昼食後、午後にかけて血糖変動幅が大きい。

フラッシュグルコースモニタリング導入前はSMBGで各食前および就寝前の血糖値を確認していたが、各食前血糖値は90-120mg/dL前後、就寝前血糖値は200mg/dL以内を推移し、ほぼ管理目標内にあった(下図参照)。一方、HbA1cは7.3%と合併症予防の管理目標であるHbA1c 7%未満を達成できていなかった。

今回フラッシュグルコースモニタリングを導入した結果、血糖トレンドの可視化が可能になったことから行動変容と治療に対するモチベーションが得られ、センサー装着中の推定HbA1cは6.2%と良好であった。一方、各食後に高血糖を認めるグルコーススパイクの存在が確認された。特に昼食後の血糖高値が顕著であったことから、そのことを話し合い昼食時の治療介入の同意を得た。

フラッシュグルコースモニタリング導入前のSMBGの結果
(SMBGでは良好な血糖推移に見えるがHbA1cの改善が得られなかった。)

確認すべき事項と次のステップ

確認すべき事項 次のステップ
低血糖に関する事項
  • ほぼ認めないが、夜間から早朝にかけて低血糖のリスクはある。
  • 就寝前投与の持効型溶解インスリンを減量する。
  • 持効型溶解インスリンの投与タイミングを夕方または朝食前に変更する。
目標範囲に対するコントロール状況に関する事項
  • 食事療法の遵守状況は良好であるが、血糖コントロールが不十分であり、さらにインスリン分泌の低下も認められることから治療の強化が望まれる。
  • 食後高血糖を選択的に改善する超速効型インスリンの投与量調節や種類変更、または併用薬を検討する。
日内変動に関する事項
  • 各食後高血糖が認められる。
  • 食後高血糖を改善するために、超速効型インスリンの投与量調節や種類変更、または併用薬を検討する。
日差変動に関する事項
  • 特に昼食後から午後にかけて血糖変動が大きい。
  • 昼食の食事内容や間食の有無を再確認する。
  • 昼食後の高血糖改善を目的に、昼食前の超速効型インスリンの追加、または併用薬を検討する。

治療内容の変更(AGPレポート解析とその後の検討より)

  • AGPを用いた療養指導により食後高血糖の存在を理解してもらうことができた。
  • 特に昼食後の血糖高値が顕著であることを説明し、昼食時の治療介入に同意してもらった。
  • フラッシュグルコースモニタリングを活用し、超速効型インスリンやα-グルコシダーゼ阻害薬の食後高血糖に対する効果の評価を行った。
  • その組み合わせで最も食後血糖値の改善効果があったα-グルコシダーゼ阻害薬150mg/日(各食直前)の追加、および超速効型インスリンの種類変更・夕食前減量や昼食前投与の追加(2-2-2)によって、各食後血糖値の改善が確認できた。
  • 就寝前投与の持効型溶解インスリンを減量した(0-0-0-10)。
  • 日々の血糖自己管理にフラッシュグルコースモニタリングシステムの使用を希望したため、使用を継続した。

初回評価から1年10か月後

日内パターン

2018年12月3日-2018年12月17日(15日)

初回評価からの1年10か月後の知見

  • 低グルコースのリスクはありますか?
    就寝前持効型溶解インスリンを減量し、明け方の低血糖リスクが治療介入前に比べて軽減している。
  • グルコース値は目標範囲内にありますか?
    低血糖のリスクなく、高齢者ガイドラインの管理目標(カテゴリー1、インスリン製剤使用:HbA1c 7.5%未満)を達成している。
  • グルコース値の日内変動はありますか?
    超速効型インスリンの種類変更や昼食前投与の追加、また各食前のα-グルコシダーゼ阻害薬併用によって、各食後高血糖の改善を認めている。
  • グルコース値の日差変動はありますか?
    昼食後の日差変動はまだ残るが治療介入前より改善している。

治療内容変更後の状況(AGPレポート解析の結果など)

  • 食事療法をまじめに遵守しているものの、血糖コントロールの管理目標が得られていなかった。SMBGとHbA1c値の解離から食後高血糖の可能性は示唆されていたが、昼食後の血糖測定は困難でインスリン注射・内服治療にも難色を示していた。しかしながら、フラッシュグルコースモニタリングの使用により食後の血糖値を自覚することで治療に対するモチベーションが高まり治療強化を受け入れた。
  • 食後血糖値の改善に対する治療効果を薬剤間で比較し、最適な治療法を選択することでより良い血糖コントロールにつながった。また、早朝低血糖のリスク低減を確認した。
  • 以降、約2年間にわたりフラッシュグルコースモニタリングを自己管理に活用し、食後高血糖や低血糖の改善を伴う良好なコントロール(HbA1c 6.7%、グリコアルブミン 18.2%)で経過をみることができた。

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