AGPケースレポートVol.18

症例内容

フラッシュグルコースモニタリングによって判明・改善したSU薬による夜間低血糖症例

症例提供・監修:
医療法人藤井会石切生喜病院 内科部長
長谷川 隆正先生

患者背景

性別・年齢 女性、73歳
診断 2型糖尿病、糖尿病歴15年、脂質異常症、高尿酸血症
HbA1c 6.5%
糖尿病合併症 糖尿病腎症2期、糖尿病末梢神経障害
既往歴 特になし
糖尿病治療状況 インスリングラルギン10単位 眠前、グリメピリド2mg 朝、テネリグリプチン20mg 朝
その他に、オメガ-3脂肪酸エチル、フェブキソスタット
フラッシュグルコースモニタリングを行う目的
  1. 基礎インスリン・経口血糖降下薬(特にSU薬)による夜間低血糖の出現
  2. 日々の食事・運動療法が出来ているか
を確認すること。

初回評価データ

日内パターン

2019年4月25日-2019年5月8日(14日)

目標範囲内(70-180mg/dL):50%, 目標範囲より低い割合 :16%, 目標範囲より高い割合 : 34%

レポートから得られた知見

  1. 低グルコースのリスクはありますか?
    深夜帯に明らかなSU薬による低血糖が認められた。
  2. グルコース値は目標範囲内にありますか?
    ない。夜間は低血糖となり、朝食後から夕食後まで高血糖が持続している。
  3. グルコース値の日内変動はありますか?
    朝食後の血糖上昇は著明であるが、それ以降はあまり認めない。
  4. グルコース値の日差変動はありますか?
    ある。昼に間食することが多いため、昼食後から夕食後にかけての日差変動が目立つ。

確認すべき事項と次のステップ

確認すべき事項 次のステップ
低血糖に関する事項
  • SU薬の中止
  • 基礎インスリンが適量か?
  • SU薬中止後の夜間低血糖を確認する
目標範囲に対するコントロール状況に関する事項
  • 夜間低血糖
  • 朝食後の急激な血糖上昇
  • 夜間低血糖がなくなったときの朝食後の血糖上昇をみる
  • SU薬をグリニド薬に変更する
日内変動に関する事項
  • 同上
  • 同上
日差変動に関する事項
  • 間食した日としなかった日の血糖上昇の差
  • 間食した日としなかった日、または間食したものによって血糖上昇が異なることを確認する

治療内容・療養指導(AGPレポート解析の結果から)

  • SU薬による夜間低血糖と、それに伴う朝食後の血糖上昇が著しい。
  • 間食した日は日中高血糖が持続、昼食後にウォーキングをした日は日中の血糖は比較的低く安定していることを説明した。
  • 夜間低血糖をなくすため、SU薬(グリメピリド1mg 2錠 朝)をグリニド薬(ミチグリニド10mg 3錠 毎食直前)に変更した。
  • 間食する場合は、炭水化物系統ではなくナッツ類などの比較的血糖上昇が少ないものに変更すること、運動した日の日中の血糖変動について、夜に振り返りをしてもらうように指導した。

初回評価から1か月後データ

日内パターン

2019年5月9日-2019年6月5日(28日)

目標範囲内(70-180mg/dL):56%, 目標範囲より低い割合 :1%, 目標範囲より高い割合 : 43%

治療介入後の状況および療養指導

  • SU薬をグリニド薬に変更したことで、夜間低血糖を認めなくなった。
  • 基礎インスリン量は、インスリングラルギン10単位 眠前で適量であると判断した。
  • 依然として、朝食後の血糖上昇および日中の高血糖持続を認めた。また、日差変動も認めたため、αGI(ボグリボース0.3mg 3錠 毎食直前)を追加した。
  • 日中に間食した日、間食をナッツ類にして運動した日、または間食をしなかった日の血糖変動に大きな違いがあることを患者さまと一緒に確認した。

日常生活と血糖変動の振り返り

日中に間食した日

間食(ナッツ類)して運動した日

間食をしなかった日

初回評価から3か月後データ

日内パターン

2019年7月4日-2019年7月31日(28日)

目標範囲内(70-180mg/dL):72%, 目標範囲より低い割合 :4%, 目標範囲より高い割合 : 24%

初回評価から3か月後の知見

  • 低グルコースのリスクはありますか?
    まれに夜間低血糖を認める。
  • グルコース値は目標範囲内にありますか?
    朝食後の血糖上昇が抑えられ、目標範囲内に入ることが多くなってきている。
  • グルコース値の日内変動はありますか?
    明らかに日内変動は縮小してきている。
  • グルコース値の日差変動はありますか?
    初回評価時に比べ、日差変動もかなり改善してきている。

治療介入後の状況

  • 朝食後血糖の上昇が抑えられたことにより、70%以上が目標範囲内に入るようになってきている。日中の間食はやめられないが、血糖上昇の緩やかなナッツ類をとる頻度は増えてきているようである。
  • 今回は雨の日が多く運動量が低下したこともあり、日中の血糖上昇を認めた。
  • 生活リズムが一定化してきていることもあり、日差変動もかなり縮小した。

治療戦略や療養指導、および日常の自己管理のためにフラッシュグルコースモニタリングとAGPを活用した結果、初回評価時に比べてHbA1cに大きな変化はないものの、夜間低血糖や血糖変動を大きく改善することができた。

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